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ポチッと押してくれたら、管理人がかなり喜びます。
Author:鳥吉-Toriyoshi-
【自己紹介】 現役バリバリの工大生です。 ・【趣味】は、TVで野球観戦、古本屋での立ち読み、写真撮り、モノ書きの真似事 ・【好きなもの】は、塩分の多そうなもの(例:塩辛)、甘いもの ・【嫌いなものは】、熱くて、辛いもの(例:カレー)、苦いもの ・【好きな小説】は、「空の境界」、「老人と海」、「ホームズシリーズ」 ・【好きな作家さん】は、奈須きのこ、ヘミングウェイ、コナン・ドイル、星新一 ・【好きな漫画】は、「トライガン」、「ブリーチ」、「うしおととら」、 ・【好きなジャンル】は、アクションファンタジー、伝奇小説 ・【好きな歌手】は、「CHAGE&ASKA」、「doa」、「Mr.Children」、「福山雅治」、「Gackt」 ・【好きな神話】は、北欧神話。(何気に私の小説に出そうかなと、思案中・・・。)
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初心者ですが、空想妄想その他もろもろを働かせて必死に書いていますので、よろしかったら見てやってください。
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Chapter.53『Gravity』
ばしゃぁん・・・
そんな音と共に顔にかけられた冷めた液体が私の視界を赤に変えた。
死を確信していた。諦めたくはなかったけど、心の何処かで絶望に打ち負けていたことも事実だ。だから、これから自分の身に起こることも受け入れる体制は整っていたのかもしれない。
だからこそ。
今、自分の身に起きていることが信じられずにいた。
あれだけ五月蝿かった死人の足音はもうしない。聞こえてくるのは、爆音のように響いて聞こえる自分の心臓の音。そして・・・・
ミシ・・・ミシ・・・・
何かの軋む音が路上に響く。
(・・・?)
ゆっくりと瞼を上げる。
僅かに動きを取り戻した手で顔を拭いながら。
*
視界に広がる光景は、異常だった。
私に襲い掛かろうとしていた死人の軍勢は、声にならない叫びを上げ、呻いていた。上空を見上げ、両手を伸ばし・・・まるで上空から迫り来る何かを防ごうとしているように。
死人の体は、犇めき合い、地中に埋もれていくように腰を落としていく。
ミシ・・・・ミシ・・・・
腰骨の砕ける音。指が折れ曲がる音。足首が曲がる音。
全ての死人は、上空から迫り来るモノから逃れることができず、その場で必死に抵抗している。
(・・・なによ・・・なんなのよ・・・これ・・・)
私は倒れたままの状態で、ありえない方向に折れ曲がりながら、人とは思えぬ姿へと変えていく死人の姿を眺めていた。
手足は押し潰され、頭と胴体だけになった姿の死人は、口を大きく開け、死人は最後に天に向けて吼えるような仕草をした。
そして。
ばしゃん・・・!
死人は、圧力に耐え切れず、水風船のように破裂し、絶命した。
それに習う様に、残りの死人も見えない圧迫感に成す術なく、異常な最後を遂げて逝った。
あれほどの死闘のあった路上には結局。死体と呼べるものはなく、空中を彷徨う黒い灰と、赤い水溜りが路上を彩っているだけだった。
*
「・・・・」
四肢に感覚が戻り始めたのを感じ、ゆっくりと体を起き上がらせる。
「・・・っつ!」
激痛が全身に駆け巡る。だけど、この異常な事態の中でいつまでも横になってはいられない。
「・・・なにが・・・あったというの・・・・」
誰に問うわけでもなく、自然と言葉が漏れた。
死人が自害したとは思えない。明らかになんらかの力で、奴らを倒した者が近くにいるはずだ。それが、自分にとって味方か敵かわからないけれど。
疑問が更なる疑問を生み、頭はパニック状態だ。
そんな、現状にいきなり声が聞こえた。それも背後から。
「驚かしちゃいました?ちょっとばかし目障りだったから潰しただけなんですけどね〜」
(・・・・この軽い喋り方・・・・もしかして・・・・)
ぎぎぎ・・・と、油の差し忘れた歯車のようにゆっくりとそちらを向く。
そこにあったのは、
「やほぅ。ちょっと遅れたけど、助っ人の登場ですよ〜」
むかつくくらいにさわやかな笑みを浮かべる中年金髪男の姿であった。
「・・・そ、そう・・・お兄ちゃんが言っていた『助っ人』って・・・あなたのことだったんですか・・・ルイスおじさん・・・」
そういえば助っ人をよこすなんてことを、お兄ちゃんが言っていたことをすっかりと忘れていたことに気付いた。しかし、まさかねぇ・・・。こんなに場違いな格好でこの人が現れるなんて、誰が想像できようか。
「そういうこと。ちょっとばかし店の仕事が長引いてさ。一応、仕事着のまま急いで来たんだけどねぇ〜。とりあえず、危機一髪のところを助けられたんだから、いいでしょ?」
そう言いながら、ルイスは軽くウィンクをした。その瞬間、吐き気がしたとはとても本人には言えない。
ルイスの仕事。それは、繁華街の裏通りにある、知る人ぞ知る、迷店のオーナー。オカマバーのトップ。その衣装は、露出度高めのチャイナドレス姿なのだが、不気味なほどに、そしてむかつくくらいに似合っているのが、腹立たしく思う。見事なまでのプロポーション。加えて、化粧を施した顔は男のモノとは思えないほど美しく仕上がっていた。本当に今年で45になるのか、あんた?と、問いたくなるのは私だけではないはず。
「夏樹ちゃん・・・また、変なこと考えてるでしょ?」
「いえいえ・・・あなたの衣装ほどではありませんよ、ええ」
「そうかい?」
なんか、不服そうに私を見つめるルイス。ああ・・・。この人が男だと知らなければきっと、とんでもない美人さんに出会っちゃったと思えるのだろうなぁ・・・と、思う。今となっては、とても助けてくれてありがとうと心のソコからは言えないくらいに、腹立たしい存在だけれど。
*
「よっこらせっと」
ルイスが私をおぶさり、ゆっくりと立ち上がる。
「すいません・・・面倒かけて・・・」
「いえいえ。気にしないで。」
さわやかな笑みを送るルイスに対し、私は苦笑いを送り返した。『あぁ。素直に感謝できない私をお許しください』、と懺悔しながら。
だが、すぐに別の気配に気付き、視線を上げた。どうやら、ルイスも気付いたらしく、不敵な笑みを浮かべながら、そちらを見ている。
「ん?まだ、生き残りがいたみたいだねぇ・・・。全部、『潰した』つもりだったんだけど、ちょっとだけ私のテリトリーから漏れた運のいい奴もいたらしい」
ルイスの口調は穏やかだが、その1つ1つの言葉から自信と殺意が窺えた。
その視線の先には、ハイハイをしながらも接近してくる1体の死人の姿があった。下半身は、何かに押し潰されたかのようにごっそりとなくなっており、腕力だけでこちらに近づいていた。上半身に残された切断面からは、次々に臓物をこぼしながらも、前進してくる死人に、感嘆の声をあげてしまいそうにさえなる。
だが、ルイスという男には、『情け』という言葉は存在しない。
全ての者に見せるような同じ笑みを浮かべたまま、ルイスはそっと腕を突き出し、
「サヨウナラ」
その手のひらを軽く握りながら、優しく呟いた。本人は、その言葉に優しさを込めたつもりも、憎しみを込めたつもりもない。その言葉には、どんな感情も篭もってはいない。
最後の言葉を発すると同時に、辺りの空気は、一瞬遮断された。
ず・・ず・・・ん・・・・
言い様のない圧迫感が辺りを支配した次の瞬間、死人の姿は、視界から消え去り、残ったのは、血の水溜りだけだった。
「・・・・・・」
私はようやく理解できた。そういえば、この人の能力のことをすっかりと忘れていた。私は、相変わらずの圧倒的な能力に言葉を失っていた。
これが、協会において、『円卓の魔術師』に数えられる、魔術師ルイス・ロックウェルの能力。 彼のテリトリーに入ったものを問答無用で押し潰す。それこそ、人が蟻を指で圧死するかのごとく・・・・。どんな方法なのか。また、どんな魔術回路を組んでいるのか。その全てが彼以外の者にはまだ理解されていない代物らしい。『重力』を支配しているのでは?と、考える者もいたそうだが、それならば、死人の立っていたアスファルトが無傷なのはおかしい。
なるほど・・・。お兄ちゃんが、最も敵に回したくなく、尚且つ彼の結界領域内では戦いたくない相手と言っていた意味がよくわかった気がする。
彼と戦ったら、人間らしい死に方はまずできないだろうし・・・・。
「ふぅ・・・。それじゃ、戻りましょうか、家に」
私の考えを知ってか知らずか。相変わらずの笑みを浮かべたまま、ルイスは私をおぶって駄菓子屋へと戻っていくのであった。
・・・ほんとに・・・味方でよかったと思う。
<続く>
---------------------------------
最強のオカマバー店長登場。
当初は、彼を主人公にしようかとも考えた人物です。
2008/05/03 (土) / 17:52
chapter.54『Quiet end』
異変に気付いたのは、歩き出してすぐのことだ。ルイスの肩越しに前方を見たとき、鼓動が早くなるのを感じた。
「・・・・開いてる?」
鍵は壊され、閉じていたはずの引き戸は大きく開け放たれていた。店の奥から漏れる淡い黄色の光がその隙間がすっと、暗いアスファルトに伸び、ルイスの足元を照らしていた。
「閉め忘れたってことはないのかい?ほら、いろいろと大変だったから・・・」
「そんなこと・・・。」
絶対に閉めたとは言い切れないけれど、ここが彼を保護するためには絶対に閉じなければいけない箇所なのだから、いくら私でも閉め忘れるとは思えない。だが、仮に閉め忘れていたとしても、背後に何かが立てば気付くはずだ。ということは、考えられるのは2つ。1つは閉め忘れていた。そして、もう1つは、私でも気配に気付けない何かが店内に侵入したか。
背筋が冷たくなる・・・。後者だった場合は、あまりに悲惨な結末が容易に想像できる。
「・・・・急ごうか。万が一の場合もあるし」
「はい・・・」
遂先ほど、全てが終わったと安堵していた心に途轍もなく巨大な地震が襲ってきたような気分だった。胸騒ぎ・・・いや、そんな甘ちょろいものじゃない。まるで、絶望を心が実感しているかのような、そんな感覚・・・。
「お願い・・・無事でいて・・・・」
そんな期待のできない願いを祈った。
*
店内に荒らされた形跡はなかった。しかし、何かが土足で侵入したことを思わせる泥の付着した足跡が店の奥へと続いている。迷いのない足取りで、店の奥へと消えていく足跡は、不安を掻き立てる。
「そんな・・・どうして・・・・」
(ちゃんと・・・守っていたはずなのに・・・)
ルイスの背から降り、私はふらつく足をもつれさせながらも部屋の奥へと走った。
「お、おい!待てったら!」
ルイスの声を無視し、私は前進した。嫌な汗が頬をなぞる。
「はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
細い廊下を走りぬけ、一番奥の部屋のドアを思いっきり開けた。
そこには・・・。
「いない・・・・・」
カクンと膝が折れ、まばたきをするのも忘れた。
そこにいるはずの彼の姿はなく、当たり前のようにあるのはただ1つ。便座だけ・・・・。
「いやいや・・・。さすがにそこには隠れないだろう・・・。こっちの部屋にいたよ」
「へ?」 背後からルイスのツッコミを受ける瞬間まで、私はトイレの前で硬直していた。
*
彼がいたのは、トイレの隣にあるお兄ちゃんの寝室だった。彼の手には、刃先の折れた刀が握られた状態で倒れていた。その近くには、マネキン人形のようなものが黒いローブを纏った姿で転がっていた。
「ねぇ・・大丈夫なの・・・?」
「うん。どうやら、眠っているようだ・・・。傷の方も・・・見たところ擦り傷程度だし・・問題ないだろう」
「そう・・・よかった・・・・。それより・・・コレは何?」
私は安堵のため息をつき、そして足元の異物に目を向けた。
「ああ・・・。たぶん・・・コレが『傀儡師』なんだろうね」
「?!・・・これが?」
もう一度ソレを凝視する。それは、デパートの洋服売り場で陳列しているマネキン人形とそっくりで、青白い顔はそれが、物質であることを物語っている。ただ、違うこと言えば、全ての間接が可動可能な状態であることと、瞼を閉じない瞳が本物のようにギラついていたことか。
「・・・・・ただの人形にしか見えないんだけど・・・・」
「ああ。でも、残り香からしても、先ほどの死人とは比べ物にならないくらいの魔力を纏っていたみたいだし・・・。そうだね・・・コレは『傀儡師』の本体と言うよりは、『傀儡師』の一部だったということかな」
「・・・・・これを倒したのって・・・やっぱり、普天さん?」
「だろうね。どうやって倒したのかは、想像もつかないけれど・・。とりあえず、もう完全に切れているみたいだし、ほっといても問題ないはずだよ」
「・・・・そうですか・・・」
「まぁ、無事でよかったよ。これで、とりあえずは我々の仕事は終わったね。後は、神耶がどんな結果を持って帰ってくれるかだね」
「・・・そうですね」
「心配かい?」
「ええ・・・そりゃあ・・・」
「大丈夫。神耶を信じてあげな。あの男、君には何も語っていないみたいだから、私も教えてあげるわけにはいかないが。1つ言えることは、あいつを殺すことができる奴なんてそうはいないと言うことかな。私でさえ、あいつを完璧に殺すことができるかわからないしね。」
「・・・・・・・」
(なにやら、物騒な内容が聞こえたような・・・・)
「それくらいあいつは強いってことさ。だから、きっと帰ってくる。我々にできることはあいつが帰ってきたとき、笑顔で出迎えてやることくらいさ」
「・・・はい・・」 「それまでは、ちょっと君も横になっているといい。さすがに疲れたろう?」
「そ、そんなことないです・・・」
慌てて空元気を振り撒く。だが、ルイスは笑ったまま、すっと指が私のデコを触れる。とたんに前進の力が抜け、そのまま畳に崩れ落ちていく。
「あ・・れ・・?」
「おやすみ。大丈夫。君が起きるまでは、ここで見張りをしているから。ゆっくりと寝ていなさい」
ルイスの優しい言葉に気を許してしまったのか、それとも彼が私に何かしたのか。
全身の力は抜け、それと同時に安らいだ気持ちが体を包んでいく。
そして、私はゆっくりとシャットダウンしていった。
<続く>
2008/05/04 (日) / 19:30
chapter.55『Dangerous blade』
「う・・・ん?」
僕はゆっくりと目を開ける。
視界は霞がかかっているかのようにぼやけているが、やがて時間経過と共にはっきりと前方を映し始める。その視界に真っ先に飛び込んできたモノは・・・・
僕に目覚めと同時に叫び声を上げさせた。
「ぬぁぁああああぁああ?!?!?!」
「ど、どうしました?!少年?!」
慌てて、がばっと起き上がるおじさん声の美人が心配そうに覗き込んでくる。
だが、現状をまるで把握しきれていない僕は、全てに混乱し、無我夢中で・・・
勢いあまって、握りこぶしを作った右腕を、目の前の彼女(彼?)めがけて放り投げていた。
その先に響いたのは、鈍い打撃音と、同時に起こった苦痛の呻き声だった。
*
「えーっと・・・・すいません・・・・大声出してしまって・・・」
「いいですよー・・・隣で添い寝してた私が悪いんですし・・・」
鼻にティッシュを詰め、斜め上を眺める男性は、目線だけをこっちに投げよこしながら答えた。なんのためかは知らないが、映画の中でしか見たことの無いチャイナドレスというのを着ている男を見て、僕はかなりびびっていた。何か悪い人間ではないのだろうか、と。だが、近くで夏樹が無防備のまま寝ているのが見えたため、深く追求するのを止めた。いや、この手の趣味の人間には下手に関わらないほうがいいと、拓哉や先輩が言っていたような気もするし。
「そ、それで・・えーと・・・」
「あぁ・・・ルイスです、よろしく一馬君。」
「あ、はい。で、ルイスさん・・・あの・・大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫ですよ・・・幸いにも血は止まったみたいですし・・・鼻骨も折れてなさそうだし・・・。それにしてもいいパンチングでしたねぇ・・・まさか躊躇なく顔面目掛けて振り上げてくるとは思わなかったので、避けれませんでしたよ、ええ。」
かなりの皮肉をこめながら、ルイスと呼ばれる男は笑顔で言う。
「す、すみません!」
「いいですよ、別に・・・。どーせ、こんな女装男なんて、気持ち悪いだけでしょうから」
「い、いいえ!とてもよく似合ってますよ!はじめは女性と間違えてしまったくらいに!」
「・・・・。そんな、女性と思った相手に、貴方は全力でパンチングするとは・・・見下げた根性ですね・・」
「あ、いや・・・その・・・見た目と声のギャップに驚いてしまって・・・・」
慌てて訂正する。
「まぁ・・いいですけどね。私も本意でこんな衣装着ているわけではないし」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。私のことは、神耶から聞いてないですか?」
「はい・・・。」
「そうですか。それなら、簡単な自己紹介をさせてもらいましょう。私の名は、ルイス・ロックウェル。アース協会から来た魔術師です」
「魔術師・・・話には聞いたことがあります。いろいろな魔法を使えるって・・・」
「まぁ、全てがそうとは限りませんけど、大方間違えていませんね。私は、そういうヘンタイ集団が集まる組織『アース協会』に所属しているんですよ。話によれば、他世界から伝えられた組織だという話ですけどね。」
「へぇ・・・・。それで・・・ルイスさんは、どうして日本に?」
「ああ。昔の友人の手助けと、ちょっとばかり厄介な敵を退治をするためにね。まぁ、それもようやく終わりを迎えれそうですけど」
(厄介な敵と言うのは、おそらく傀儡師と呼ばれる者のことだろう。ということは、昔の友人というのは・・・)
「昔の友人って・・・神耶さんのことですか?」
「ええ。彼とは、長い付き合いなのでね。かれこれ・・・20年くらいでしょうかね」
「・・・・20年?」
(・・・長すぎないか?神耶の見た目から察するに明らかに20代の青年にしか見えないんだけれど・・・) 「まぁ、その間の滞在先に利用してるのが、例のお店だったんですよ。あそこは、表の顔はこういう店ですけど、裏では、従業員のほとんどが退魔の力を身につけた実力者の集まりでね。私の部下として、活躍してもらってるんですよ。今回の件でも、部下の活躍がなければ、夏樹ちゃんは死んでいたかもしれない・・・」
「へぇ・・・」
そんな集団がこの街にあったとは知らなかった。都会は、経済成長のために過去の遺産を切り捨てていて、退魔なんかは真っ先に消滅したと聞いていたが、こんな形で残っていたとは・・・。
「と、まぁ、私の話はこれくらいにしましょう。それに貴方も聞きたいことがあるんじゃないですか?」
「聞きたいこと?」
首をかしげた。いきなり、何を言っているのだろう・・・。
「そう・・たとえば、貴方の目のこととか?」
「知ってるんですか?!」
「まぁ、貴方よりはね。」
*
「あんいんびじ・・ぶる?」
「Uninvisible Eye。君の目のように、他人が見えないモノを視る力のことさ。」
「・・・これって、危ないものなんですか・・?」
「この世に、危険じゃない力なんてないよ。要は、君の在り方次第だね。ただ、いろいろとこちらの予想外なこともあったがね」
「予想外?」
ルイスは、ちらっと、僕の手元にあるモノを眺めた。
「そう、例えば君の持つ剣のことだ。」
「普天のことですか・・・?コレの何が?」
「君はどのように聞いているか知らないが、そもそも退魔刀というのは、昔地球を襲った『妖魔』を斬るために作り出された武器だった。霊を斬るというのは、そこから偶然生まれた副産物に過ぎなかったし、それを使えるのは、霊視のできる者だけだったんだよ。つまり、退魔刀とは、『妖魔』と『霊体』しか斬れない程度のものだったということだ」
「程度って・・・それだけでも十分じゃ・・・」
「普通ならば、ね。だけど、君の剣はその退魔の常識を逸した存在らしい。」
彼の目つきは変わった。まるで、獲物を品定めしているライオンのような・・・。
「え?」
「本来、剣と言うモノは折れればその効果が消えると言われてる。それなのに、ソレは未だに生きている。それに・・・・」
「それに・・・?」
「君は実際に、霊体じゃないものを斬ったのだろう?その剣で。例えば、赤い糸のようなものを。」
「?!どうして・・・・」
どうして、この人はそれを知っているのか・・・。だんだんと怖くなる。誰も知らないし、知りようのないはずのものを何でこの人は言い当てることができるんだ? そんな思い出してくるのが、神耶の言葉。
『魔術師による、フリークス狩りのこと』 もしかしたら・・・この人・・・・。
「そこの人形を見れば明らかだよ。その剣では、物質を斬ることはできるほどの強度もないからね。ということは、その剣でも斬れるものがあるとすれば、見えないもの・・・強度のないものくらいだろうし」
「・・・・」
「君の見た赤い糸というのは、魔力糸(あやつりいと)と言ってね、この手の人形を傀儡師が動かすのに使うものなのさ。まぁ、普通は他人に見えるはずのないものなんだけど。」
「な・・何が言いたいんですか・・・・」
「・・・結論から言おう。君の剣は、退魔刀じゃない。もっと、危険な存在だ。特に君と合わさることによってはね。」
「・・・・・」
「その剣は、霊体を斬る剣じゃない。君が視たものを斬る剣なのさ」
「僕が見たものを・・・?」
部屋が薄暗くなっていく気がした。寒気が走る。目の前の人間が次第に化物に見えてきた。
「どうやって、こんな代物が生まれたのかは解らないけれど・・・」
「・・・・・・・」
「危険なコンビなんだよ、君とその剣は。それこそ・・・今ここで潰して置かなければいけないくらいに」
ルイスは、嗤いながら、立ち上がった。
そして・・・・・・・・。
<続く>
--------------------------------------------------
物語も残すところ、あと6話。
いや・・・長すぎですね・・・。
短編小説の気分で書いていたのに・・・・。
やはり、書きたいことをいろいろと詰めすぎたのが原因ですかね・・・。
まぁ、おかげでHELLS-GATEのほうはかなりネタが溜まりましたけどね。
さて、あと少しでこの物語もおしまいです。 ここまで付き合ってくれた方々、どうもありがとうございました。
もう少しだけ、お付き合いいただけたら幸いです。
2008/05/04 (日) / 20:17
chapter.56『HEAVENS-GATE』
ルイスは嗤いながら、立ち上がった。
そして・・・・・・・・。
「さて。君を起きたことだし、私はこれで帰らせてもらうかな」
「え?」
一馬はルイスの顔を見つめ、驚きの声をあげた。
「なになに?まだ帰ってほしくなかったとか?」
「い、いえ・・・そうじゃなくて・・・その・・・てっきり殺されるのかと・・・」
「あ〜・・・殺してほしかったかい?」
「ま、まさか!そんなことないです!」
一馬は慌ててぶんぶんと頭を振るい、体全体で否定を表した。
「うんうん。それはよかった。自殺願望者に情けをかけてやるほど私もできていないからね。肯定されたら本当に今殺しているところでしたよ」
「・・・えーと・・・見逃してくれるってことですか?」
「ん〜・・・。見逃すと言うか・・・そもそも今の君を殺したって私にはなんのメリットもないんだよ。いや、デメリットのほうが大きいかな。そう、どうせ殺すのなら、もっと君が強くなって殺し甲斐のある人間になってからだね」
「ああ・・・そうですか・・・・」
聞くんではなかったと、顔を青冷めながら一馬は顔を背けた。
その姿を見ながらルイスは軽く微笑んだ。それは、まるで自分の息子を見ているように優しく柔らかい視線で。きっと本人でさえも気付かないうちに。
「・・・そういうことで、今のところ私は君の味方であることには変わりないですよ。これからもなんかありましたらココに来てください。神耶の知り合いなら、できる限りのことはさせてもらいますから」
そういいながら、ルイスは懐から取り出したケースを一馬の目の前に投げた。それは、スナックなどで貰えるマッチのようで、ピンクの文字で『HEAVENS-GATE』と書かれたケースのウラには住所と電話番号が記載されていた。
「・・・・ちなみに僕未成年ですけど・・・・」
「あ〜大丈夫大丈夫。心が二十歳以上ならば大歓迎だから」
「・・・・・・」
いや、違法じゃ。と、心の中でツッコミをいれつつ、一馬は苦笑いを浮かべた。そして、オカマバー『HEAVENS-GATE』・・・・。どんなことがあってもこの近辺には近づくものかと心に誓うのであった。
*
店に外に出ると、若干の肌寒さがあった。しかし、あれほどの死体が道に犇めき合っていたと言うのにそこはいつもと変わらない夜の滞在する何の変哲も無い道に戻っていた。その中をやけに目立つ赤いチャイナドレスの人物が立っていた。
一馬のその人物の背中に声をかけた。
「ルイスさん・・・最後にいいですか?」
「ん?」
「神耶さん・・・大丈夫ですよね?」 「心配かい?」
「それは・・・・勿論」
「ふむ・・・。まぁ、絶対に無事って補償はないね。もし、彼が例のフリークスと戦っているのならば、死ぬことだってあるだろうね。」
「・・・・」
「まぁ、安心しなさい、今の私が本気を出したとしても、きっと彼を完全に殺すことはできないから。きっとなんとかなるだろ」
「は?完全に?」
ちょっとうまく解釈できない発言内容に眉をひそめ、首をかしげた。 が、ルイスは特に気にも止めずに話を続けた。
「そうです。まぁ、それくらいあの男は頑丈だから安心して待っときなさい。それじゃ、夏樹ちゃんのことよろしくお願いしますね」
「え?あ?はい?・・・あれ?」
ルイスの言葉の意味がわからずに曖昧な返事をしているうちに、一馬の視界からはルイスの姿が消えていた。残るのは、冷たい風と、暗く沈んだ路地の風景だけだった。
<続く>
-----------------------------------------------------------------
すみません!リアルが忙しくて、更新できませんでした!もうラストスパートだというのに!
これからも更新は遅れてしまうことになりますが、よろしくお願いします。
さて。今回はここで 『謎のオカマ魔術師』 ルイス・ロックウェルの能力について紹介したいと思います。
本編でも紹介したように、彼の能力は自分のテリトリーに入っているものを潰す能力です。でも、それは重力のように上から押し潰すものではありません。
「蟻を指で押し潰すように」という表現を夏樹がしていましたが、実はそのとおりなんです。彼がイメージしているのは、自分の指でそれを潰す瞬間であり、簡単に言えば、彼のテリトリー内に見えない巨大な親指と人差し指を出現させ、目標をプチっと潰す能力なのです。
能力名は、『圧花(おしばな)』。
ちなみにその巨大指を破壊する方法は見つかっていないため、彼の攻撃をかわす事でしか対応できないのでした・・・。
いやぁ・・・不気味なキャラクターですねぇ・・・。見えない指で敵を潰すとか・・・ホラー映画に出てきそうですね・・・。
2008/05/20 (火) / 23:05
chapter.57『Wizard and Dog』
冷めた夜風が、体を掠めていく。
能力発動の影響で若干痛みのある右手の親指と人差し指を摩りながら、ルイスは路上をただ一人歩いていた。
先ほどまで死人で溢れ、地獄絵図と化していた路地はすっかり落ち着きを取り戻し、いつもどおりの夜の姿を見せていた。それがかえって不気味にも見えなくもないが。
かつん・・・かつん・・・かつん・・・
ふと、ルイスは足を止め、頭上を照らす月を眺めた。そして、誰もいないはずの空間に言葉をかけた。
「・・・・・やはりあなたでしたか。死人の数が予想していたよりも少なかったのでおかしいと思っていましたが」
ルイスの言葉は、小さく響き、消えていく。ただの独り言のようにも聞こえるが、その表情には笑みが浮かんでいた。
「・・・・・っち。気付いていたのか」
すっと、電信柱の影から黒いローブの男が姿を現した。黒い3つ目の犬を連れて。
「でも、助かりましたよ、番犬さん。あなたのおかげで、私の大切な仲間が殺されずにすみましたから。」
「・・・別に・・・。そもそも大切だと思っているんなら、あの女が必死に戦っている様子を眺めずにすぐに助けにいけよ。ギリギリまで傍観しておいてよく言うよ」
ぶっきらぼうな返事をして、男はそっぽを向く。その方向には、大量の死人が山を成していたそして、その様子を黒い犬は、その死人をよだれをダラダラと垂らしながら見上げている。路地をせき止めるダムのように道を封鎖するそれはとつてもない異臭を漂よわせているが黒犬には、食欲をそそる香りらしい。
「まぁ・・・犬の餌にはもってこいだったから・・・ちょうどいいさ。」
*
「それで、全ては解決したのか?魔術師」
「ええ。ほぼ解決しましたよ。あとは・・・神耶の結果報告を待つだけです。」
『神耶』という言葉に、番犬屋は眉をひそめる。 「神耶か・・・。あのブラックボックスが動いているとはな・・・正直意外だ・・」 「いえいえ。私としては・・・任務以外の目的で動いているあなたのほうが珍しいと思いますよ?」
番犬屋。その名のとおり、依頼者を守る番犬として生きるボディガードのことだ。だが、彼らが守るのはもっぱら人間相手からではなく、妖魔などの人外の生物から依頼者を守るのが仕事である。そのため、今回のような騒動にも十分対応できる能力を身に着けている。よって、依頼者をどんなことがあっても守ろうとする番犬屋と、人外の集団とも言われる魔術師とは、よくぶつかり合い、争いの耐えない関係にあった。 だから。今回のように魔術師の手助けともとれる行動は番犬屋にあるまじき姿なのだ。
ましてや、4ヶ月前にも、小規模な戦闘を繰り広げた関係なら尚更・・・。
「仕方ないだろ・・・・これも依頼の範囲内なんだ・・・。俺としては、あんたらに係わり合いたくなかったが・・・」
「依頼・・・あぁ!そういうことですか。・・・くくく。しかし大変ですね、あの子の護衛なんて」
ルイスは何かに感づいたように苦笑を浮かべた。
「・・・別に。あいつの親も随分な過保護っぷりとは思うが、あれだけの力を持っているんだ。心配しないほうがどうかしてる・・・。それにあいつといると、割と楽しいからな」
「まぁ、面白いという意味では私も同感ですけどね。・・・・普天一馬。東北の元大貴族のご子息ですからね。こんな敵地とも言える地方にたった一人でノコノコとやってくるわけはないか・・」
「ああ。とりあえず、あんたの息のかかったところにいるのならば不安ではあるが安全であるとも言える。今回のところはあんたに頼ろう。・・・俺もこの死人の山を片付けた後に帰らせてもらう」
「ええ、わかりました。それじゃ、今後ともよろしくお願いしますね、番犬さん」
番犬と呼ばれる男は、ルイスの言葉に眉をひそめ、明らかに嫌そうな顔をした。
「・・・そうだ。前から言おうと思っていたんだが、俺のことを番犬というのをやめてくれないか?あまり好きじゃないんだ、それ」
「そうですか?なかなかかっこいいと思いますけどねぇ・・・・ならば、名前で呼ばせてもらいますよ、富士倉拓也くん?」
「・・・・・・今度はフルネームの上に『君』付けかよ・・・・」
はぁ、と頭を抱え、絶対嫌がらせで言っているなと感づきながらも、男はその呼び方に肯定した。
「・・・・それじゃな、オカマ魔術師。また会う夜まで」
「ええ。それでは失礼」
ルイスは軽く微笑みを残すと、塀を飛び越え、去っていった。
拓也はルイスが去っていった後を眺めた後、黒犬に一言命令を下し、自分も去っていった。
「・・・・・全て食え」
黒犬は嬉しそうに目を輝かせながら、山にかじりつくのであった。
<続く>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
説明不足だったので追記。
富士倉拓也の正体は、番犬屋。簡単に言えばボディガード。
普天一馬の親族に内密に一馬を護衛するように命じられていた。
二人の出会いに関しては偶然だったが。
かなり強いのですが、今回は都合上、その戦闘方法等は明かせません・・・
魔術師とは仕事上の都合で関係は悪いですが、依頼ならば魔術師を護衛するときもあります。
めんどくさい職業ですね・・・まじで。
2008/05/26 (月) / 10:17
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