初心者ですが、空想妄想その他もろもろを働かせて必死に書いていますので、よろしかったら見てやってください。
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エッシャーの騙し絵。
初めて、あの絵達を見たときは、あまりの衝撃でした。そして、彼の作品をもっと見ようと本を探し回ったのを覚えてます。
今回、紹介する動画は、このエッシャーの作品を映像化したものです。正直、これは凄いと思います。
彼の不可思議な空間を、映像化されるとますます理解するのが困難になります。
これをエッシャー本人が見たら、どんな感想がもらえたでしょうかね。
2007/12/02 (日) / 07:29
Chapter21:「Mystery man」
「ったく、喋れないなら喋れないって言えよな。」
男は面倒くさそうにそう言うと、ちゃぶ台の上に放置されていた新聞を手に取り、TV欄を見始めた。・・・・この部屋にTVはないのに。
「・・・言えって・・・。どうやってしゃべればいいんすか。」
「そりゃぁ・・まぁ・・・テレパシーみたいなやつでビビビッって」 男は新聞の影から顔を出すと、人差し指で頭の上に稲妻のようになぞってみせる。 「・・・無理ですって。そりゃぁ無理ですって!」 と、吼えた。 男が僕の異常に気づいたのは、例の軽口(「あんた、なんで黙ってんの?」)を叩いてから数分経ってからだ。しかし、それを知っても彼は驚くこともなく、指をパチンと1回だけ鳴らした。すると、さっきまで全く動く気配のなかった四肢は水を得た魚のようにビクンと小刻みに震え出し、全身に血が巡っていくのが体感できた。
「しかし・・・どうして指パッチンで・・・。」
「そりゃぁ、お前。俺がお前を封じてたからに決まってんだろ。」
「・・・・・は?」
「あ、あのなんだかよく分かりませんけど・・・。まぁ、とにかく助かりました。ありがとうございました。・・・・それで、えっと・・・あなたは?」
今更ながら、目の前の男の名前を知らないことに気づく。いやしかし、初対面で名前も聞いていない状態でここまでツッコミを入れられるキャラも少ないと思う。
「・・・あれ?自己紹介してなかったっけか?」
「ええ。」
「ふむ・・・・・んじゃ、これやるよ」
そういうと男は、懐から一枚のテレカサイズの紙を取り出し、手渡す。
そこには『日瀬(ひせ)駄菓子屋店 仮店主』と書かれた文字が赤文字で書かれており、その下の列には小さい字で漢字四文字のみが書かれていた。どうやら名前のようである。しかし、なんて読むのだろう・・・読み方次第では徳の高い坊さんの名前に聞こえなくもないが・・・。
「えーと・・・・神耶(かみや)さんでいいっすか?」
「あ〜・・呼ぶ捨てでいいよ。俺、まだ26だからな。敬語使われるような歳でもない。それにあんたともそんなに大差はな・・・・」
「・・・に、26?!」 僕は、彼の言葉を遮り、叫んだ。
( 嘘・・・・?!てっきり40代かと・・・。)
「・・・なんかその反応は腹立つけど、黙ってやるよ。」
「あははは・・・。あ、そうだ。自己紹介遅れました。僕の名前は・・・・」
「退魔師の普天一馬・・だろ?」
「・・・・・・・・・・・へ?な、なんで知って・・・」
「何言ってやがる。こっちの世界じゃ有名人だぞ?東北の退魔の名家の跡取り候補が東京に来て、無許可で退魔活動してるってな。それもタダで。」
「・・・・・」
(もしかして、僕のやっていたことはよくなかった・・・?)
不安がよぎる。もしかして・・・僕の命が狙われたのはそのせいなのかもしれない。
「えーと・・。もしかして、すんごく悪いことやってました・・・?僕。」
「ん〜まぁな。退魔の家系は、関東にもいるし、中にはそれを商売として食っている連中もいるしな。それなのに、勝手に獲物取られたらそりゃ、怒ることもあるだろうな」
「・・・や・・・やっぱり・・・それじゃ・・・」
「まぁ、そういう場合もあるってだけの話さ。ぶっちゃけ、このあたりではそこまで活動できる退魔師はいねぇから、問題ねぇだろ。それに、今回のこととは全くの無関係だしな」
「・・・・・へ?」
やっぱり、この人・・・。あの死神のことを知っているのかもしれない・・・。
<続く>
2007/12/03 (月) / 02:07
Chapter22:「Bitter tea」
(あの死神のことを知っているのかもしれない・・・・) という、些細な予感は、実にあっけなく的中することになった。
「んでさ、どうよ?体の調子は。どっか痛いところとかねぇか?」
「は・・?へ・・・・?あ・・と、とりあえず何処も・・・。」
全身くまなく確認したわけではないが、大丈夫そうだ。果たして、ほんとに僕は昨日殺されかかったのか?もしかしたらほんとに夢だったのか?
という気さえしていた。それこそ、あの晩に見た死神なんて悪い冗談だったんじゃないかと。
次の言葉を聞くまでは。
「そうか。そいつぁよかった。んじゃ、ぶった斬られた胴体の傷も癒えたみたいだな。『あの馬鹿』にやられた傷、結構ひどかったからな。ま、成功する可能性は五分五分だったんだが。」
「・・・・あの馬鹿・・・?」
「ああ。お前、大鎌持った女にやられただろ?」
「神耶さん・・・あの死神の仲間なのか・・?!」
「仲間・・・っていうか、身内みたいなもんだがな。いや、ほんとお互いとんでもない馬鹿と知り合ったもんだ。」 うんうん、と首を縦にする神耶。しかし、僕はそれどころではなかった。
なんか、急激に不安になってきた。あんな危険な人物と知り合いだなんて・・・。なんで助けられたのか知らないけど、危ないような気がする・・・。
「そういや、まだお茶だしていなかったな」
「あ、いえお構いなく・・・。」
僕は半ば上の空でそんな返答しかできなかった。死神に、僕はまだ関わった状態だということに気づいただけで不安と焦りが積もり始め、まともな返答すらできなくなっていたのだ。
「そういうわけにもいかんだろ。お前の後ろの棚にお茶葉ときゅうすがあるから」
「・・・あるから?」
「飲みたかったら勝手に入れて飲め。」
「・・・・・は?」
・・・・できなくなっていたのだが・・・。
「あ、ついでに俺の分も頼む。」
「なんで僕が?!」
ある意味、そんなことを吹っ切ってくれる現状が真正面に現れたおかげでそんな不安は吹っ飛んでしまった。
「そりゃぁ、お前がきゅうすに一番ちかい位置にいるからだろ。安心しろ。ポットの中のお湯はさっきいれたばっかだから。」
(さも、「俺、優しいだろ?」みたいな言い方しないでくれ!)
「そういう問題じゃないっすよ!」
「そうか?」
「そうです!普通、お客側に茶を入れるよう要求する人なんていませんって!」
「んだよ。男のくせにグダグダとうるせぇやつだなぁ。」
「・・・・もういいです・・・。僕は飲みませんから。」 反論に疲れ、折れることにする。そうだ、俺はこんなところで意味のない漫才行為をしてる場合ではないんだ。
「お?なんだ。いらないのか?」
「ええ・・・。正直、そこまでのどか沸いてるわけでもないし・・。」
「そうか。まぁ、いいや。」
「・・・はぁ。」
「だったら、俺の分だけよろしく!」
「・・・・・・・・はぁぁぁあ??!」
「いや。さっきガキ共相手に怒鳴ってたから喉渇いちゃってな。渋めでよろしくたのm・・・」
「あんたは自重という言葉をしらないんすか?!」
<続く>
2007/12/03 (月) / 02:13
Chapter23:「Reencounter」
目の前に現れたあの子を私は殺し損ねた。そのことがあの時からずっと私をイライラさせた。あのとき邪魔さえ入らなければ確実にトドメをさせていたのにという憤怒もあった。しかしそれよりも。一瞬、切り裂くことに躊躇し、鎌を振り上げるのが遅れた自分にも苛立っていた。
(それでも、私があの子を殺さなければいけない。もう誰にも邪魔はさせない。絶対に止めてやるんだから。)
揺れる電車の窓を凝視する。高速で流れていく景色の前に映る自分の愚かな顔を見た。
*
「信じられない・・・」 話はあまりに唐突すぎた。僕自身が望んでいた真実なのにソレは予想していた範囲を超えていたのだ。
「なんだ。幽霊は信じてるくせにゾンビを信じられないっていうのか?」
「いや・・・その・・・」
内容は実に簡潔だった。街に徘徊しているゾンビを退治していて、誤って僕を切り殺したというものだった。ゾンビに間違えられたというのもアレだが、なによりもこの街に多数のゾンビで溢れかえっていて人を襲っているということがあまりにナンセンスだった。
「ゾンビって・・・あれですよね?死者がなんらかの方法で蘇ったってやつですよね?」
「そ。んで、そいつらを全滅させることが俺らの仕事だったというわけだ。まぁ、一般人を俺らが巻き込んでしまうとは思わなかったがな。」
「はぁ。」
「そんな顔すんなよなぁ〜。傷も塞がったんだし!それともなんだ?慰謝料よこせとか言い出すんじゃねぇだろうな?」
「ち、違いますよっ!ただ、いきなりゾンビだと言われても・・・。世間でもそんなことで騒がれたことなかったし・・・」
「何言ってんだ。めちゃくちゃ騒いでるじゃねぇか。」
「へ?」
「連続無差別殺人事件。あれは、そいつらの仕業だよ。」
「・・・・は?!」
「それだけじゃない。最近多発している自殺もありゃほとんどがゾンビの成れの果てだな。」
「意味がわかりません!」
混乱した。自分の全く知らないテーマが突然、もんのすごく身近なテーマに成り変わったのだから。
「なんだ。簡単なことだぞ?人を襲うゾンビって言ってもやはり腐乱は抑えられないんだよ。だから、機能停止する前に自殺して証拠隠滅してたみたいだ。ま、これは俺の推測だけど・・・警察に証拠捕まれても自殺してるみたいだな。」
「そんなに・・・頭の回転いいんですか・・・ゾンビって・・。」
「まさか。ゾンビはただの操り人形。ちゃんとそれを操る人間がいるのさ。」
「人間・・?」
「ああ。そいつはな・・・」
・・・・・・・・・・・・リリリリリン・・・!!!!
そのとき、タイミングよく電話のベルが鳴り響き、場の空気を劈く。てか、あまりにベストタイミング過ぎて、心臓止まるかと思いましたよ、ええ!
「あ〜。わりぃ。ちょっと出てくるから、ここで待っとけ。」
そういうと、くわえていた煙草を灰皿の上に置き、神耶さんは隣の部屋とを隔てるふすまを開け、奥へと消えていった。そして、それからまもなくうるさく鳴り響いていた電話のベルの音が止まった。余談だが、さっきからずっと煙草をくわえていたのに、一度も火をつけていなかったのは単に忘れていただけなのだろうか。
*
それから5分あまりが経ったが、一向に帰ってくる気配はなかった。そこで、さっきまでの話の展開をまとめてみた。街にはゾンビと言われる操り人形が彷徨っていて、それらが例の連続殺人を繰り広げている・・・。そして、犯行がばれたり、腐乱が抑えられなくなると、自殺をして、証拠隠滅を図る。それがゾンビではなく、人間であったとごまかすために。
・・・・・コレを信じろ・・・と?
あまりにできすぎた話の展開に、逆に信じられない自分がいた。それにまだ肝心なことが聞けていない。僕を殺した女の子の正体である。間違って殺そうとしたと言っていたが、ほんとにそれだけが原因だったのか?ゾンビ狩りっていう名目だけにしては、あまりに真剣だったあの目が強烈に記憶の中に残っていた。もっと、別の感情が篭もっている様で・・・。
そのとき、ガラガラとガラス戸が開く。ようやく電話が終わり帰ってきたのかと思い、振り返り、その行動の途中で気づく。神耶さんは・・・ふすまの向こうに行ったのではなかったかと。ならば、ガラス戸の向こうから帰ってくるなんてことあるのかと。しかし、それに気づいた頃には顔はガラス戸の向こうに立つ彼女を見ていた。
・・・・・・・・見間違えるわけがない。
そこにいた女は紛れもなく僕を殺した張本人だった。
<続く>
2007/12/09 (日) / 21:09
Chapter24:「Red seal」
ガラス戸の向こうに現れた少女。その手に鎌は握られてはいなかったけど、耐え難い恐怖心が背中を走る。嫌な冷たい汗が噴出すのを感じた。人違いで殺されかけたと言われた。だから、別に僕を殺したくて殺したわけではないと。でも、
『だから、二度と殺しには来ない』とは、言ってはくれなかった。
考えすぎかもしれない。だけど、いざ目の前に現れるとそんなことを考えてしまった。だから、あの瞬間僕は、あのとき以上に神経を研ぎ澄まし、同じ結末だけは迎えないように気張っていた。
*
「ほんっと〜にごめんなさいです!」 少女は、僕の存在に気づくや否や、頭を下げ、謝ってきた。
この突然の謝罪攻撃に僕は反応が遅れた。いや、だってね。いきなり人のことをぶった切ってくる人間が素直に自分の非を認めて謝ってくるなんて考えられなかったし。
「い・・・いや。その・・なんというか・・・」
かっこよく「気にすんな!終わったことさ」なんて言えたのならよかったのだが、このときはそんな台詞はかすりもせず、なんて言えばいいのか分からずにただ焦っていた。
「いっやぁ〜!ほんと、あの時はどうしようかと思っちゃいましたよ!でも、無事そうでよかったです!あ〜安心したらお腹すいてきちゃいました」 アハハハと、人事のようにあのときの悪夢を明るく話す少女は、もぞもぞと白のコートを脱ぐとその場にペタンと座り込み、ちゃぶ台の上に置かれた饅頭に手を出していた。
「・・・・・はぁ」
なんか、心の底からため息が漏れた。さっきまで殺されるんじゃないかと気張っていた自分が馬鹿みたいに思えた。
積み重ねてあった饅頭をうまそうにほお張る少女はそんな僕に気づくと気恥ずかしそうにこっちを見る。でも、饅頭は口いっぱいに含めたままで。
「ふぇ?なんでふか?」
「いや。なんでもねぇ・・・茶でも飲むか?」
「お!かたじけないですっ!是非、渋めで宜しくです!」
「へいへい・・・」
僕は神耶さんの入れていたとおりに茶を用意する。湯飲みはひとつしかなかったから、さっき神耶さんが使用していた空の湯のみを使うことにした。
「どうぞ」
「ども〜」
そういって受け取ると、まだ入れたてで熱いというのにそのままグビグビと飲み干す。 猫舌の僕には考えられない光景だった。
「それで・・・えーと・・・。名前なんていうんだ?」
「え?あ、すいません!まだ名乗ってませんでしたね!私は「日瀬夏樹(ひせなつき)」といいます!あ、夏樹って呼び捨てでいいですよ。これでも一応大学1年生です!不束者ですがよろしくです!」
「よ、よろしく。えっと、僕の名前は・・・・」 名前を言い出そうとして、本日二度目の体験をする。
「あ、知ってます。普天一馬さんですよね?」
「・・・・・・・・やっぱり君も知ってるのか・・・。そんなに有名人なの?僕って・・・。」
「えーと・・。そうですね。退魔に関わっている人ならば恐らく知ってると思いますけど・・・。別に悪い意味とかじゃなくて、珍しいってことで・・・。」
「そうか・・・・」 なるほど。珍獣扱いなってるのか。
「あ、そうそう。忘れるところでした!」
そういうと、夏樹は立ち上がり、壁に貼ってある地図の元へと歩んでいった。そして、赤のペンでいくつか丸印を付け始める。3つほど書き足された赤丸の中には昨日僕が襲われた場所も含まれていた。
「なにやってんだ・・?」
「あ、えっとこれはですね〜・・・・。っと!その前に私がやってることは、その・・・もう聞きました?」
どうやら、無断でぺらぺらと喋ってはいけない内容らしい。
「あ〜、うん。神耶さんにはもう聞いたよ。あんたたちがゾンビ退治してるって・・・。」
「あ、よかったー・・。それじゃ話しますね。これは、最近多発してる自殺の現場と、私がゾンビを倒した場所を記しているんです。ほら、こうやっておけば、どこが一番ゾンビが出没してるか、わかるでしょ?そうすれば、あっちこっち探し回らなくても済むかと思って。」
「あ〜なるほど・・・。」
「ただねぇ〜。1つ欠点があるとすれば、自殺者の特定ができていないんですよね・・。だから、自殺をしたのが本物なのか偽物なのか分からないからあまり当てにはできないんだけど・・・。」
「たしかに・・・。それに赤い丸もあまり集結してなそうだね・・。いろんなところに点在してる・・・。」 それは言ってみれば、地図上に赤いおはじきをばら撒いたかのように法則性の全く見えない散らばり方であった。
「うう・・・。それを言い出したら・・・全てが無意味に思えてしまうぅぅぅ・・・。」
夏樹はおよよよ、とその場にペタンと座り込み、赤丸だらけの地図を恨めしそうに眺めた。
そんな姿を布団の中から眺めながら、僕は妙な気分を味わっていた。地図上のそこらじゅうに散らばった赤い丸。それは一見したらなんの役にもたたなそうだった。だけど、何かが僕の中で引っかかっていた。それがなんなのか全然わからないけれど。
その赤丸だらけの地図は見えない何かを探し続ける僕らのことを、ただ黙って見下ろしているのであった。
<続く>
2007/12/16 (日) / 21:46
Chapter25:「Freaks」
突然、開け放してあったふすまの向こうからぬっと、彼は戻ってきた。
「悪い悪い。電話が長引いてしまってな。って・・・なんだ夏樹、来てたのか。」
「もっちろん。お兄の無事を確認して、入院中のお婆ちゃんに知らせるのが私の使命だもん。」
(・・・・お兄?兄妹だったのか・・?) そんな疑問を抱いている僕のほったらかしに二人の会話は続く。
「ったく・・・。まだ、あの夢のことを信じてるのかよ。変な夢を見るなって言っとけ!」
「・・・夢?」 なんのことやら意味不明の会話に遂、質問してしまう。
「うん。私のお婆ちゃんが見た夢でね。この店を潰そうとへんな奴らがうじゃうじゃやってくる夢を見たんだって。それで、お兄の心臓を貫いて殺しちゃうって。」
「へ・・へぇ・・・そりゃ怖いね・・・」
「あのババァは、未来視に近い能力を持ってるからな。全く信用してないわけじゃねぇけど。毎日おんなじこと言われるとさすがにキレるぞ!」
(・・・・未来視?なんか、さらっといってるけど、それってかなり凄いことなんじゃ・・・。)
「あはは〜・・。あ、そういえば、普天さん。あの夜、私と向き合ったときに『そんなのは夢の中だけで十分だ』って言ってましたよね?」
「え・・・ああ。」 突然、話のテーマが自分に移ったことで慌てて顔をあげる。
「それって、同じ状況を夢で見たってことですか?」
「えーと・・。そうだね。鎌を持った女の子に殺されそうになる夢だったから。似てるって言えば似てるね。2度も同じ夢を見るとは思わなかったけど。」
「へ〜〜!じゃあ、お婆ちゃんと一緒で未来視できるのかもね!いいなぁ〜。私、見たこと無いから羨ましいなぁ・・・。」
「そ、そんなことないって!僕だって初めての経験だったんだから・・・。」
目をキラキラさせながら、人の顔を見つめてくる夏樹に慌てて視線を逸らし、ごまかす。
「・・・おい。それはマジな話か?」
そんなとき、さっきまで俺らの会話を黙って聞いていた神耶さんが急に横から口を挟む。心底信じられないって顔をしたまま。
「『夢』のことですか・・?そうですよ?未来視なんてたいそうなも・・・」
「ほんとにおんなじ展開だったのか?」
「え、ええ・・。」
「・・・・・・そうか」 なんか腑に落ちないといった風に首を傾げながら座り込む。そして、しばらく何かを考えているようだったが、すぐに顔を上げ、灰皿の上に置きっぱなしだった煙草をくわえた。
「まぁ、いい。その話はとりあえず終わりだ。それよりさっきの続きを話してやるよ。確か犯人の正体からだったか?」
「え・・ええ。」 僕は、さっきの彼の言葉も気になっていたが、興味はすぐさまこの殺人事件の真相のほうに寄っていっていた。夏樹は内容を知っているからか、それとも話の邪魔をしないためか、ゆっくり立ち上がると、部屋を出て行った。
「まず犯人だがな、本名は知られていない。ただ分かっているのは、そいつに付けられたコードネームだけで、『黒の傀儡師』と言われている。とある組織から化物(フリークス)に指定されていて、抹殺命令が出されているくらいに危ない奴だ。」
「・・・・・抹殺命令?!」
「ああ。抹殺理由は実に明白。大量殺人罪だ。世界中で殺戮を繰り返したらしくてな、その被害者数は詳しくわかっていないが恐らく4桁は軽くいくだろうって言われている。しかも60年ものあいだ、その組織の追っ手から逃げ切った強者でもある。あの化物集団の組織から逃げ切るんだから正直ありえない話だ。」
「大量殺人・・・。世界中で・・・。たった一人で・・・。」
その内容はサークルで佐御先輩に聞かされていた例の殺人事件と酷似していた。いや、おそらく同じ内容だろう。しかし・・・摸倣犯だと思っていた犯行全てがたった一人の存在によって行われていたなんて・・・。
「それって・・・体の一部を奪っていく殺人のことです・・よね?」
「ん?そうだ。」
「なんで・・・そいつはそんなことを・・・。」
「・・・・・お前さ、『不壊部位』って知ってるか?」
「ふかいぶい?なんすかそれ。」
「やっぱ知らないか。ちょうどいい。説明してやるよ。お前も知ってのとおり、人間の体は正直言って脆い。簡単に傷つくし、修復にも時間がかかりすぎる。だけど、そんな人間にも何処か一箇所だけ決して壊れない部分ってのがあるらしい。それが『不壊部位』って言うそうだ。それは個人差があるから、人によっては耳だったり、足の小指だったりするし、普通は誰もそれには気づかない。そんなものをどういうわけか、やつらは集めているみたいだ。」
「そんなもの集めて・・・いったい・・・。」
「さぁな。ただのコレクターなのかもしれねぇけどな。」
「・・・・・・」 実に嫌ななコレクターである。
「えっと・・・最初にいっていたゾンビの話は何処へ・・・?」
「ゾンビってのは、殺された人間が傀儡師に操られている人形だ。そいつらの役割は傀儡師の代わりに殺しをすることだと考えている。それらに殺人をやらせているもんだから、なかなか傀儡師を捕まえられないのさ」
「は・・はぁ・・・」
もう、頭の中はパニック状態である。ここまでの話をまとめると。黒の傀儡師という変な名前の化物がたった一人で60年間も暴走していて、『ふかいぶい』って言う人間の体の中にあるモノを奪うために人殺しをしている・・・・。そいつは殺した人間の体を操って、自分の代わりに殺しをやらせている・・・・。
ほんとにこんなホラー映画のようなことがこの街で起こっているのか・・・。
「案の定混乱してるな。とりあえず、もう俺らには関わらないことだ。あんたが好き好んで関わっていい世界じゃない。」
「いや。どっちかというとそちらから関わってきたような・・・・。」
「む。んじゃぁ、アレだ。俺らに出くわしたら死に物狂いで逃げろ。とにかく、俺らとお前とじゃ、やっている仕事が違うんだ。関わっていいことなんて何もない。」
「そんな・・・違いなんて・・・」
「あるだろうが。俺らは物体を相手にしているが、お前が相手にしているのは霊体だ。互いに自分の分野以外のモノには干渉できないようになってんだよ。つまりだ。お前じゃ、今回の相手をどうこうする手段はないってことだ。それに、夏樹を相手に反撃はおろか、初撃を交わすことすらできなかったんだから、話にもならんよ。」
確かに自分は無力には違いなかった。でも、ここまで状況を知ってしまうと、何も知らなかった頃のように生きることはできない。自分の知らないところで発生してる殺戮を自分には無関係だと割り切って生きていけるほど・・・・僕は強くないのだ。
「それでも・・・なにか手伝いたいんです」
「なにが目的だ?」
「へ?」
「俺らは、ソレ相応の金が手に入るからこの仕事をやっている。で、お前はなんのために俺らに加わろうとしてるんだ?先に断っておくが金の分け前はねぇぞ?」
「お、お金じゃないですよ!」
「じゃあ、なんのために?」
「だって・・ほら。そいつがいるためにこのあたりの住民は怯えて生活してるわけだし。僕らがこうしている間にも犠牲者がでているかもしれない。だから・・・」
「自分が命をかけて、そいつを退治してやりたいと?」
「・・・まぁ・・そういうことです」
「・・・くく・・くくく・・はっはっはっ・・・!そうかそうか!この街の人間のために、化物退治をするってか!」 ものすごく愉快ように大笑いをする。だが、その瞳には案の定笑みはなく、何処か目障りそうに、怒りに満ちていそうな、そんな複雑な感情をあらわにしていた。
そして、彼は笑いながら告げた。
「はははははは。やっぱ、俺は、お前嫌いだ」
「・・・・・・・え?」
そんな最終通告は、むかつくくらいに満面な笑みで通達された。
てか、笑われながら、「嫌い」って言われるのはこんなにも気分が悪くなるのか。
<続く> more...
2007/12/17 (月) / 16:35
Chapter26:「Friend」
俺、『富士倉拓也』に友人と呼べる人間はいない。
少なくとも、大学に入るまではそうだった。
かといって話せる人間がいないわけではない。中学のときも高校のときもそれなりに喋れる人間はいたし、そいつらと遊びに行くこともあった。馬鹿みたいに大騒ぎをして近所に怒られたもあったっけな。でも、それだけのことだ。俺とつるんでいた奴らは俺のことを友達だとか、親友だとか言っていた。けど、残念だが俺にとってそいつらは『他人』でしかなかった。
だから、向こうが話しかけてこない限り、俺は奴らに関わらないし。俺から何処かに誘うなんてこともない。でも、向こうが誘ってきたときには、断る理由がない限り参加していたから、他人から浮いているってことはなかったと思う。彼女を作った理由だって、向こうが俺と付き合いたいと言って来たからだ。それを断る理由がなかったから、それに了承した。ただそれだけだ。だから彼女のことが好きだとか、会いたいとか思ったこともない。いや、むしろそのような感情がどういうものなのか俺にはわからなかった。
それでも俺は、今まではずっとこの位置を維持し続けていた。
あいつに出会うまでは。
あいつはほんとに世間知らずで、何処か放っておけない気がした。他人に関心を持ったことのない俺がそう思ったんだからよっぽどだろう。 『普天一馬』との出会いは、ほんとに些細なことだった。だけど、俺はあれからずっと、奴とつるんでいる。
*
ピンポーン・・・・。ピンポーン・・・・。
・・・・・・ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!!
ゲームコントローラーのBボタン連打のようにチャイムを鳴らし続けるが、家主が出てくる雰囲気は一切ない。
「ちっ!こんな遅くに何処をほっつき歩いてんだか・・・。」
俺は、手にぶら下がっていた買い物袋をドアノブに引っ掛け、ドアに寄りかかって座った。
「やれやれ・・・。あいつのことだから、一日費やしてゲームでもやってんのかと思ってたんだがな。買い物にでも行ってるのかね。」
目の前の景色の色は、次第に暗くなっていく。頭上の蛍光灯がつき、アパートの廊下を照らし始めた。
「うう・・。寒いなぁ・・・。四月とは言ってもやっぱ夜は寒いな・・・。あいつ・・ほんとに何処まで買出しに行ってんだよ・・・。てか、これで実は居留守だったってことになったら、ぜってぇぶん殴ってやる・・・。」
そんな愚痴をここにいない馬鹿に洩らしながら、俺はひたすら待った。
・・・・気づかない振りをしていた。今、街で騒がれている無差別殺人事件にあいつが巻き込まれていないって。俺の身近な人間に、そんなことが起こるはずはないって、思い込もうとしていた。必死に不安を隠そうとしていた。緑岡先輩に昨日のことを聞いたときも、ほんとは足が震えていたんだ。だから、あいつは今、平然な顔をしてアパートにいるはずだって、今日は講義をさぼっていただけだって思い込もうとしていた。
けど、駄目だ・・・。
時間が経つにつれ、不安は更に増大し、否応なく俺の心を支配し始める。背中の向こうの部屋が暗いままである事実と、街を取り巻く、血の香りがよりいっそう不安を掻き立てる。
俺は・・・どうしたらいい?俺は、何をしたらいい?馬鹿みたいにここであいつの帰りを待ってればいいのか?探し出せばいいのか?だが・・・あては何処にもない・・・・。
「・・・・・・・くそっ!」
拳を床にうちつける。その振動と音が狭い廊下に響き渡る。
が、その音も一瞬で消え、そして
カツーン・・・・カツーン・・・・と
廊下には人の足音が響いた。
「?!」
俺は、慌てて立ち上がり、音の方を見る。
あいつが帰ってきたのか?
心臓がバクバクと激しく鼓動する。
が、やがて。そんな気持ちはふっとんでしまった。
カツーーン・・・・カツーン・・・・
まるで、この世に彷徨っているように。この世に未練があるように。
それは、ただ獲物を求めて、徘徊していた。
「・・・・誰だよ・・・お前・・・。」
俺は、こっちにゆっくりと接近する人間に言葉をかける。無論。返答なんか待つ必要はない。その手に握られた赤くさび付いた包丁。そして、これだけ離れているのに強烈な腐敗臭と血のにおい。
それだけで、そいつはまともじゃないと、理解できた。
カツーン・・・・カツーーン・・・・カツ・・。
それは立ち止まり、頭をおもむろに上げる。光のないその目は
獲物を凝視し、そして・・・
にたぁぁ・・・・・・と、嗤った。
<続く>
2007/12/20 (木) / 00:23
Chapter27:「Reason」
「やっぱ俺、お前嫌いだ」
「・・・・・・ど、どうして・・?」
「ん?簡単なことだ。俺はお前みたいな偽善者野郎や、ボランティア活動みたいのが大嫌いなんだよ。」
神耶さんは、そう言った。でも、このときの僕にはこれの本当の意味を理解することはできなかった。
*
夕暮れを背に歩く帰り道。手には例の和傘を持ち、隣には道案内役として付き添ってくれている夏樹がいた。
「ま・・まぁ、そんなに落ち込まないでくださいよ」
「お・・おう・・・・」
「えーと・・・。ほら、お兄ってあんな人間だし、大抵の人間には嫌いって言ってますから、気にしないほうがいいですって!」
「・・・・そうなんだ・・・。」
しきりに顔を覗きこんでは、勇気付けようと彼女は声をかけてくれた。なるほど。そんなに酷い顔をしているのか・・・今の僕は。
「なぁ・・・・あの人はなんであそこまで偽善者を毛嫌いするんだ?」
「え?ん〜・・・。昔からそうだったからなぁ・・・。確か、助ける理由を曖昧にしてるからだとか、軽々しく人助けと言ってるところだとか・・・むぅ、いろいろありすぎてわかりませんね。」
小首を傾げ、考えてくれているがどうもこれといった理由がないらしい。
「そうか・・・。」
(ただ単に、守銭奴ってやつなのかな?それとも、実は他人大嫌いとか?)
彼の性格は・・・正直、今起きている事件よりも難題なんじゃなかろうか。
「そういや・・。夏樹もお金のために人助けをしてるのか?」
「えーと・・・んー・・・。そうですね。表向きはそういうことになってますね。」
「表向き?」
「うん。ほんとのこと言うと、お兄怒るし・・・。」
「なんだ?ほんとのことって?」
「・・・・そうですね。普天さんなら言ってもいいかもしれませんね。」
ちょっと、考え込んでから、きっとこちらを見据えると、開口一番とんでもないことを聞いてきた。
「普天さんは・・・・大切な人を殺したことってありますか?」
「・・・い、いや。ないけど・・・。なんでそんな話に・・?」
「私は・・・殺したい人がいるんです。・・・・とってもとっても大切だった人を。」
「え?」
待て待て・・・。話が読めない。いきなり殺人予告か?!
「えっとね。この街にゾンビが徘徊してるって聞いてますよね?」
「え・・ああ。」
「それじゃ、そのゾンビは、元はなんなのか知ってますよね?」
「そりゃもちろん。生身の人間が死んで・・・・あ。」
「ええ。つまり、この街で殺された人間がゾンビとなって徘徊して、新しい殺人を犯しているというわけです。」
・・・ああ。ようやく話の意図がわかった。でもそれは・・・・
「まさか・・・」
「ええ。私が殺したい相手。それは・・・・・」
しばし、夕暮れ空を眺めた後、口を開いた。
「・・・・『ゾンビ』となって、今も街の何処かで徘徊している私の大切な友人です。」
「・・・・・」
「おかしな話ですよね。友人なのに殺したいなんて。・・・ほんとに信じられないんですよ。彼女とは、幼稚園からの付き合いで・・・ずっと一緒だったんです。ついこの間までは、高校卒業旅行にも行ったし、カラオケにも行って騒いでたんです・・・。それなのに2,3日後に街で偶然会った彼女は既に死んでいて・・・人を無表情で殺す死神になってたんですだから・・・・。」
そうだ。それは十分にありえることだった。この街で生きている人間がいつ殺され、ゾンビになってもおかしくない状態なのだ。その対象が自分の知り合いにならないなんてことは・・・考えるだけ愚かすぎた。 でも、それはあまりに・・・・耐え難い。自分の知っている人間を・・ついこの間まで普通に当たり前に出会っていた人が、ある日突然『動く死体』となっていたなんて。
「それは・・・・その・・・・」 言葉が出てこない。こんなときなんて声をかければいいのか、全くわからなかった。慰め?叱り?同情?どの言葉も結局は彼女の意思を傷つけるだけでなんにもならない。ただ、言った本人だけが自己満足する言葉だとわかっていた。
「・・それでも・・・彼女を殺すことが、私の目的なんです。彼女を救えなかった・・・大切な友人を助けることができなかった私が今、できることは・・・・一刻も早く、彼女を殺すことだけなんです・・。悲しいですよね。私の中でのあの子の存在の大きさを知ったのが、彼女を失ってからなんて・・・」
彼女はそういいながら、苦笑いにも似た笑みを作る。しかし、目は暗く沈んでいた。
「・・・・ごめん。俺が聞いていいことじゃなかったな・・・・。」
「いえ、そんなことないです!むしろ聞いてもらってすっきりしました。ありがとうございます。」
つらいはずなのに、彼女は僕を気遣って微笑んだ。その姿を見ると、苦しくなった。背負っているものが違いすぎた。いや、それ以前にこの戦いへ望む覚悟が違いすぎていたんだ。自分の掲げた正義感がとたんに脆く弱いものに感じた。
「お、駅が見えてきましたね。ここからはもう帰れますか?」
「え、ああ。大丈夫だ。ほんとありがとな。」
「いえいえ〜。元は私のせいなんですから。私のほうこそ、巻き込んでしまってすいませんでした。」
「いいって。それじゃ・・・もう会うこともないだろうけど・・・。その・・がんばってな。」
「あ。ありがとうございます!」
僕と彼女は、そこで別れた。僕の後ろから何度もブンブンと手を振る彼女に苦笑しながら。
僕は、駅への一本道を下っていった。
もう、ここに来ることもないし、会うこともないだろう。僕は、「非日常」から「日常」へと向けて歩いていった。後ろで手を振る彼女に振り返ることなく。
*
自宅に着いたのは、それからしばらくしてからだった。その頃には、空はすっかり暗くなっており、肌寒い風がアパートの廊下を突き抜けていった。
「ん?なんだこれ。」
部屋の前まで来て立ち止まる。ドアノブには何処かのコンビニのビニール袋がぶら下がっていた。
「誰かの悪戯か?それとも差し入れ?」
とりあえず、中を確認すると、スナック菓子2つと、チュウハイが4缶。それと、生温かいコーヒーの缶が1つ入っていた。
・・・酒とあったかい飲み物を1つの袋に入れるのはどうかと思う。
まだコーヒーが温かいから近くに持ってきた当人がいるかもしれないと辺りを見回してみるが、やはり人の姿はなかった。
「んー・・・。とりあえず、部屋の中に入れとくか。」
袋を持って、部屋に入り、玄関前においておくことにした。もしかしたら、誰かがとりに来るかもしれない。
1日ぶりの部屋は、何処か懐かしく感じた。そう思うと急に体が重くなり、睡魔が襲ってきた。僕は、フラフラの体でベッドにダイブすると、そのまま深い眠りについていった。
*
・・・・・その日、アパートの近所で殺人事件が発生していた。
被害者は成人男性一人。被害者の四肢は切断されており、バラバラ殺人だったそうだ。その近くにはその凶器と思われる赤錆びた包丁が落ちていたという。
しかし、この情報を聞いたのは、不覚にも次の日の放課後のことだった。
<続く>
2007/12/23 (日) / 18:39
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